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腕時計

2013年06月29日(土曜日)たぶん晴れだったと思う

 15年ほど前から、僕は機械式の腕時計を使っている。一般に「自動巻」と呼ばれるものだ。駆動力に電池を使わず、そのいっさいを内蔵するゼンマイの力でまかなっている。そのため時計本体は厚く、重くならざるを得ない。複雑な歯車の組み合わせで成り立っているため取り扱いには気を遣うし、メンテナンスの手間もかかる。だが、その面倒くささがなんとも魅力的なのである。

 腕時計の進化の歩みは、ちょっと変わっている。すなおに考えれば、まず手巻きのゼンマイ式が生まれ、次に電池式、その後に自動巻へと推移してゆくはずなのだが、なぜか電池式を飛び越えて自動巻が先に作られてしまっている。そして、どんな機械も旧型は新型に駆逐される運命にあるはずなのだが、不思議なことに腕時計はどの駆動方式も生き残っている。おそらく、それぞれの持つ特徴が単なる長所や欠点ではなくなってしまい、外観は同じ腕時計であってもまったく別の価値観または趣味性を有するようになったからではないだろうか。この調子だと、これからもゼンマイ式が消えることはないように思う。

 腕時計に求められる本来の機能を追求すると、ソーラー発電の電波時計が最強だと思う。軽くて正確で、ほぼノーメンテである。しかし、この便利で快適過ぎるところに僕は引っかかってしまうのである。
 機械式の腕時計を手にする前は、電池式のクオーツ時計を使っていた。どんなに手荒く扱っても、月に10秒と狂うことなく時を刻む。メーカーは忘れてしまったが、安価であったにも係わらず非常に優秀な時計だった。十分に満足していた。では、なぜ僕はその時計を手放したのか。
 あるときのことだ。そのクオーツ時計の文字盤を眺めていた僕は、奇妙な違和感を覚えた。そのときは漠然としたものだったが、今ならなんとなく分かる。淡々と動き続ける時計に、おそらく恐怖していたのだ。いつかは自分も土に還るときがくる。その後も、この時計は仕事を続けるのだ。主人の時が止まったことなどお構いなしに、ひたすら自分の役割を果たし続ける。電池が切れるまで数年かかるかもしれない。僕は想像した。何かの拍子に行き倒れとなり、朽ち果ててゆく自分の姿を。死して数年が経ち、白骨となった手首に巻き付きそこで動き続ける時計を。背筋がヒヤリとする。これではホラーになってしまう。

 腕時計と自転車は、ちょっと似たところがある。ピンからキリまでの差がものすごく大きいのだ。楽に移動するという自転車本来の目的を果たすためなら、ホームセンターへ行けば1万円でおつりがくる。腕時計も、時間さえ分かれば良いのなら千円で手に入る。しかし、ある人はロードバイクに数十万円を嬉々としてつぎ込み、またある人は百万円を超える腕時計を何本も所有する。どちらもひどく日常的な機械であるにもかかわらず、ある一線を越えた途端に奥行きが際限なく深くなる。

 僕の愛用している腕時計はオリエントというメーカーのものだ。このオリエント、非常にマイナーな存在だが日本の企業である。ひたすら機械式時計にこだわり続けた頑固な会社。職人の集団だ。あまりにも頑固すぎて商売が立ち行かなくなり、とうとうセイコーの子会社になってしまったほどだ。優雅や豪華といった形容とは無縁だが、まじめな時計を作る。なんといっても手頃な価格が嬉しい。ロレックスやオメガなら時計に興味がない人でも聞いたことはあるだろうし、世界三大機械時計(ヴァシュロン・コンスタンタン、オーデマ・ピゲ、パテック・フィリップ)なんてのもあるのだが、そういった一流品は雲のはるか上の成層圏を突き抜けたお値段設定なので、最初から食指すら動かない。ちょうど僕の身の丈にあった時計。それがオリエントなのである。

 さて、そこで僕の相棒の話だが、このところ急に遅れが目立ってきた。ひどいときには、日に60秒近いズレが出る。理由は分かっていた。機械式の時計は、定期的にオーバーホールしてやる必要があるのだ。前に開けてから5年は経つので、とおにその時期を過ぎてしまっている。忙しかったわけではない、もちろん忘れていたのでもない。実は、懇意にしていたオヤジが、高齢を理由に時計屋を閉めてしまったのだ。小汚い店だった。偏屈なオヤジだった。でも、その店が僕は気に入っていた。
 ぐずぐずと先延ばしを続けてきたが、待ったところでオヤジが若返るわけでもなし。もちろん何かの拍子に時計が回復することもない。少々気はひけるが、オリエントを取り扱っているよその店へ持ち込むことにした。

 ネットで検索したところ、山口市中市商店街の岸田時計店がヒットした。場所は井筒屋の斜向かい。
 
2013062901

 一応、これこれこういう格好で入店しても良いか、と電話で訊ねてから訪問した。思いのほか友好的に迎えられたので、つい調子にのってしまった。店員さんにお願いしてブログ用のネタ写真を撮ってもらう。
 冷静に眺めると、これはいい大人がやってはいけない行為であった。今は猛省している。
2013062902

 これが相棒の裏からの写真。シースルーになっていて、ゼンマイの動きが見える。
 最近の男性用腕時計は、ケースサイズ39から40ミリほどが主流らしい。一方、相棒は36ミリ。ひと世代前のサイズである。たしかに小ぶりだが、この時代遅れ感が僕にはたまらないのだ。
2013062903




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僕もここの時計屋に行ったことあります。
いい大人はサイクルウェアはダメでしょう。でも、その表情からは、達成感を感じます。赤潮さん、アッパレ!

No title

>モカさん
仕事帰りに立ち寄ったのですが、他にお客さんが居なくて助かりました。
それでも、店内に入った瞬間、店員さんたちが「ざわざわ」としました。やはり大人の作法としては失格だったようです。とは言え、一度やってしまえばこちらのものです。もう怖いものはありません。次は、もっと派手なジャージで行ってみます。

No title

ドライブスルー突入と肩を並べますね.
目を疑いました.合成写真なんじゃないかと.

No title

>BTさん
むふふっ、なかなか凄かったでしょ? 簡単そうに見えて、これはケッコウ高いハードルでした。
ちなみに、この岸田時計店。店員のご婦人が店の外までお見送りしてくださいます。深々とお辞儀をされる前をバイクで走り去る。自分のことながら、ちょっとシュールな絵でございました。

No title

この時計屋さん、外から覗いた感じでは品のあるお店だったと記憶してます。
サイクルジャージはちょっとハードルが高いかな・・・。
自動巻きにオーバーホールが必要なのは知らなかったですね。
細かいピッチで動く秒針は好きなんですが、厚みと重さが気になって、ついクオーツにしてしまいます・・・。

No title

きれいな時計です。
こちらのお店、井筒屋から出た時に思わず入りそうになります。


No title

>ろくばんさん
それが普通の感覚だと思います。腕時計は軽くて正確そしてメンテナンスの楽なのが一番です。でも、世の中には無駄なことに何故かこだわってしまう馬鹿ちんも多いのです。たとえるなら、カーボン全盛のこのご時世に、クロモリの自転車フレームを所有するような人たちーー  あっ、僕のことか。


>きんたろうさん
なぜか、時計はいつまで見ていても飽きません。そのへんもロードバイクと似ているかもしれません。小遣いを貯めて、もう一本買おうかと思っております。もちろん機械式。グランドセイコーあたりを狙っておりますが、もしもエクスプローラーが再度小型化したら全力で行きそうです。


もう

一線を越えれいるので
名にやってもしょうがない、、、。

そういえば結婚指輪は岸田で買いました。

No title

>ミッちゃん
面白い人だ。変わった人だ。変体だ。と、色々段階はあるでしょうが、たしかに最初の一歩踏み出してしまえば大差はないように思います。人として超えてはいけない一線を笑顔で超えさせてくれる。自転車ってそんなものなのでしょう。
ああ、昔の僕に戻りたい。
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使い分けるのが面倒になってきたので、これからは本名でいこうと思う。調べてみたところ、非常に世帯数の少ない姓のようである。そのまま漢字で書いてしまうのもあれだから、カタカナにしておく。

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